検査ではなく記録と設計で支える判断能力|支援者が拾う“兆し”とは

はじめに:判断能力は“測る”ものではなく“支える”もの

契約や意思決定の場面で、「本人に判断能力があるかどうか」は制度上の重要な要件とされる。
しかし、現場ではMMSEやHDS-Rなどの認知症簡易検査が“判断能力の証明”として扱われることがある一方で、それだけでは本人の意思を十分に捉えることはできない。
支援者が拾う違和感、会話の中で見える理解力、意思表示の揺らぎ——それらを記録し、設計に活かすことこそが、判断能力を“支える”支援である。

検査に頼る支援の限界

MMSE・HDS-Rの役割と誤用リスク

MMSEやHDS-Rは、医師が認知症の診断補助として使うために設計された検査であり、点数だけで判断能力の有無を決めるものではない。
それにもかかわらず、支援現場では「~点だから判断能力あり/なし」といった誤った使い方がされることがある。
検査の形式に頼ることで、本人の意思や生活背景が見えなくなり、支援が制度の枠に閉じ込められてしまう危険がある。

支援者が感じる“違和感”は検査よりも鋭い

支援者は、日々の会話や生活場面の中で、本人の理解力や意思表示の揺らぎを感じ取ることができる。
その違和感は、検査では拾えない“兆し”であり、支援の質を左右する重要な情報である。

支援者が拾う“判断能力の兆し”とは

会話の中で見える理解力・意思の一貫性

  • 契約内容を本人が自分の言葉で説明できるか
  • 質問に対して一貫した回答ができるか
  • 意思表示が場面によって変化していないか

生活場面での判断・選択の様子

  • 日常生活での意思決定(食事・金銭・人間関係など)
  • 自分の希望を他者に伝える力
  • 選択肢を理解し、比較して選ぶ力

本人の言葉に宿る“納得感”

  • 「自分で決めた」という感覚があるか
  • 説得されたのではなく、自分の意思として語っているか
  • 支援者が「この人はわかっている」と感じられるか

記録と設計で支える判断能力

記録の工夫が“意思の証明”になる

  • 面談記録(逐語・要約)
  • 音声・動画による意思表示の記録
  • 第三者(家族・支援者・専門職)同席による確認
  • 契約内容の説明を本人が言葉で再確認する場面の記録

これらの記録は、契約の有効性を補強するだけでなく、支援者自身を守るためにも重要な手段となる。

支援者が設計する“意思の支え方”

  • 契約支援の場面で、本人の意思を中心に据えた設計を行う
  • 制度の形式に合わせるのではなく、本人の理解力に合わせた説明や確認方法を工夫する
  • 記録と設計を通じて、本人意思の尊重を制度の中で実現する

支援者の立ち位置と制度への提言

支援者は医師ではない。診断はできない。
しかし、支援者だからこそ拾える“兆し”がある。
その違和感を記録し、設計に活かすことで、制度の限界を超えた支援が可能になる。
制度設計に求められるのは:

  • 判断能力の評価基準の明確化
  • 支援者が巻き込まれないための仕組み(第三者機関・記録の標準化)
  • 本人意思の記録と共有の制度的担保

支援者の立ち位置を制度に組み込むことで、本人意思を守る支援が持続可能になる。

おわりに:支援者ができる“判断能力の支え方”

判断能力は、検査で“測る”ものではなく、支援者が“支える”もの。
本人の意思を守るために、支援者は違和感を拾い、記録し、設計する。
制度の枠組みを超えて、支援者が現場でできることは確かにある。
その力を、制度に組み込むための提言として、次の支援につなげていきたい。

📚 検査ではなく“記録と設計”で支える支援を深めるために

本人の理解や意思表示は、検査ではなく“現場で拾える兆し”から見えてきます。
支援者がその兆しをどのように記録し、どう設計に活かすか——その視点は、以下の記事でも詳しく解説しています。

  • 判断能力が問われる契約一覧|支援者が見落とせない実務の境界線👉 [記事はこちら]
  • 意思決定支援と制度の限界|支援者が制度を越えて向き合う瞬間
    👉 [記事はこちら]
  • 制度を“使わない”という選択|制度があっても、使わないほうがよい場面とは👉[記事はこちら]

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